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Smoke and Fools

We want to climb the highest place... 『S.N.F.』の輝かしくも、まぬけな記録と、徒然記。

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最高峰への挑戦2

いよいよ当日を迎える。

11時に鯨岡邸に到着する予定であったが、その頃斉藤は、愛車「ランサーエヴォリューションⅢ」を洗車していた。JAFのN車両規定に沿って改造を施した、純粋なレーシングカーである彼の車は、最高の加速、操縦性能と共に最悪な乗り心地を兼ね備え、運転する者はそのレスポンスとフィーリングに酔いしれ、同乗する者は360°から迫りくる激しい振動に酔ってしまうという代物であった。

11時半頃、痺れを切らした鯨岡から電話が入った。

「もしもし、今どこにいるの?」
「あー、ごめん。到着は少し遅れるけど、順調にそちらに向っているよ」

普段は時間に厳格な斉藤であったが、この時ばかりは大目に見て欲しいと思った。しかし、洗車をしていたから遅れたということを話すと「ごめん」という言葉の誠意を疑われ兼ねないので、あえて口に出さないことにした。

結局1時間遅れで鯨岡邸に到着。いそいそと荷物を積み込み、ただちに出発。臼井邸へと向った。臼井は東京都練馬区に居を構えており、石神井公園の近くとのことだった。東京の道に無案内な斉藤にとって、都内に詳しい鯨岡の存在は大変助かる。彼の尽力もあってなんとか遅れを取り戻し、13時半過ぎに臼井邸へ到着。そしてすぐさま出発。

三鷹を抜け調布方面へとひた走り、調布ICから中央道へ突入。サービスエリアで遅めの昼食を摂り、河口湖ICへ向けて爆走を開始するランサーEVOⅢ。途中、下品な跳ね馬(赤)がいたので懲らしめたりしているうちに、空模様が怪しくなってきた。

「うーむ、雨雲だねー」

大月JCTで富士五湖方面に分岐した辺りから、雨が降ってきた。これからの彼らの行く末を暗示するかのようだった。

河口湖畔に到着すると、雨は一先ず上がっていたが、厚い雲に覆われて富士山が見えない。あんなにでっかい対象物がそっくり隠れるほど、辺りは薄灰色の世界に包まれていた。そして寒い。

「やばいな。麓でこの気温だと、やっぱり山頂は氷点下必至だよ」
「そうだね。ビールは冷えるから程ほどにして、ウイスキーにしておこう」
「ストーブ持ってきてるんだったら、コーヒーを買っていこうよ」

皆それぞれに「寒さ」に対する感じ方や考え方が違うようだ。臼井は経験者らしい冷静な分析、斉藤は酒の心配、初心者の鯨岡はそれなりに的確な意見を述べているようだ。寒いときに飲むコーヒーは格別である。

麓のコンビニで買い物を済ませると、河口湖口5合目を目指して出発。ここで鯨岡が、

「地図を見ると、富士スバルラインに途中から合流する道があるよ。この道から入れば、料金を払わなくても済むんじゃない?」
「確かに交差している道があるね。よし、行ってみよう」

国道138号線から県道に入り、中の茶屋を過ぎて細い林道に入った。こういうワインディングロードは、斉藤の車の真骨頂である。

「折角だから、ちょっと遊んでもいい?」

二人の返答よりも早く、斉藤の手足はシフトダウンしながらエンジンの回転数を上げて、アクセルペダルを底まで踏み込んだ。グワァーッという独特な金属音混じりの咆哮を轟かせ、少しニヤケタ表情を浮かべて操作に没頭する斉藤、後部座席で右に左にと体を揺さぶられながら歓声を上げる臼井、助手席で冷静に地図と道を照らし合わせ、対向車に注意を払っている鯨岡の3人を乗せて富士山麓を駆け抜ける白い槍騎兵。

暫く進んでいくと、前方に陸橋が見えた。猛スピードでその陸橋をくぐりぬけた直後、斉藤は何かを感じた。

「今の陸橋の上がスバルラインなんじゃないの?」

そう言いながら速度を落とし、道端に停車した。これまでに通過した場所の地名、道の形状を照合してみると、どうやら斉藤の意見が正しいようだった。つまり、今進んでいる道はスバルラインと立体交差しており、何処まで進んでも合流することはないのである。まあ、有料道路にちゃっかり侵入できるルートなんかがあったら、商売上がったりである。

「この地図が広域すぎて、交差点にしか見えなかったんだよ」
「OK、OK。引き返して素直にお金を払いましょう」
「まあ、世の中そうそう旨い話は無いものだよ」

ドライブ中の喧嘩の原因No.1は、地図の見方によるトラブルだろう。そんなつまらないことで喧嘩をしてもしょうがないので、すぐに切り替えてスバルラインへと舵を切る。精神的にも大人に成長した3人であった。

富士スバルラインに入ってからも絶好調の斉藤とランサーEVOⅢ。他の車両が気圧の低下と共に力を失っていく中、ターボチャージャーで強制的に空気を圧縮してエンジンに送り込む彼の車は、衰えることなく上り坂で前を行く車両を追い越す。一瞬、正面に観光バスが現れてヒヤッとしたが、車を信じてアクセルを踏み込み続け、なんとか追い越し成功。

「フーッ、今のは危なかったねー!!」

ニコニコしながら同乗者に話しかける斉藤。どうやら、他に人を乗せていることは忘れていないようだった。さすがに次もうまくかわせるという保障はないと自覚し、残りの行程はゆっくりと進む。程なくして、5合目駐車場へと到着した。

17時ということもあってか、一般駐車場はだいぶ空きがあった。テントを張るためのスペースが必要だったので、2台分を占拠して停める。これだけ空いているのだったら、文句も無いだろう。

出発までには時間があるので、周囲を散策することにした。観光バス用のロータリーには、ひっきりなしにバスが到着し、大勢の人々が降りてくる。そして、ぞくぞくと山頂方向へと出発していった。

「あれはもしかして、途中の山小屋で休憩してご来光を目指す人たちなのか?」
「どうやらそんな感じだねえ」
「これは、うかうかしていると、山頂は渋滞するな」

狭い登山道で渋滞なんて真っ平ごめんである。遅々として進まないし、寒いし、眠いし…と考えただけでもウンザリする。大量に搬送されてくる登山客の様子を見ながら、そんなことを考えていた彼らであった。
赤富士

一瞬空が晴れ渡り、夕日に輝く

見事な赤富士を見つめる人たち


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無題

  • としゆき
  • 2009-11-04 19:21
  • edit
待ってましたよ!
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1974/07/02
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 いつかそんなことを言ってみたい…

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